再登校事例

社交不安障害による不登校 男子高校生GM君 Vol.11

愛着不足

(2012/1/4)
 
朝から久しぶりに教室に再登校できました。
模試でしたが1日教室で受ける事が出来ました。
 
その時は「腹痛などの症状も無く過ごせた。」と私に話したのですが、後で新井先生のスカイプカウンセリングの時「実は下痢の為休み時間の度にトイレに行っていた。」とわかりました。
 
その後もしばらく下痢や吐き気の為に登校出来ない日々が続きました。
 
 
(2012/1/6)
 
担任の先生からの電話を父親が受け「卒業するための出席日数、単位が足りないので2月も出席しなければならないかも。」と言われました。
 
息子は登校出来ないもどかしさからか、話かけても攻撃的な返事や態度が目立つようになりました。
 
 
(2012/1/7)
 
自宅でスカイプカウンセリング。「精神面は悪くないが、身体面での反応が強いようなので家庭での養育の記憶に狙いを変えてみる」と言う方針になりました。
 
下痢や吐き気の原因が医学的である可能性を確認するため、一応、病院で胃腸関係の検査を受け、異常無しという事を確認しました。つまり、これで精神的な原因のみを追及すればよいことになりました。
 
その後新井先生からのメールで質問に答えた結果、私たち両親の、子供の頃からの育て方に原因がある事がわかりました。
 
息子の兄(長男)に少し問題がありその兄に手がかかってしまい、その分次男はしっかりしていると思いあまり手をかけなかった。
 
これ位出来てあたりまえと言う気持ちが常にあり、学校関係のことでも日常でもあまりほめなかった(息子はいい点を取ってもほめられないのでつまらなかったと言っていたそうです)。
 
父親は母親まかせで子育てとの関わりを避けてきた。ほめることはほぼなかった。つまりあまりポジティブに構われていないなどなど。
 
「このままでは社交不安障害(引きこもりの一歩手前)になりますよ。」と言われ、今までと逆の事をするよう指導されました。
 
大学進学を親があきらめ声優学校進学を応援する。
今までほめなかった→一日一回ほめる。
お父さんと話さなかった→一日一回話す。
子供の前で笑顔がなかった→一日一回息子に向かって笑って話しかける。
あいさつもしなかった→「おはよう」「おやすみ」を必ず言う。
「ありがとう」もいわなかった→息子が家事や気配りを何かしてくれたら「ありがとう、うれしいよ」と笑顔で言う。
 
特に父親との関わりを強くするように勧められました。
 
これらの件を実行しましたら、少しずつ息子の気持ちも和らいできたようで「声優学校に行く為に登校したい」と言ってくれました。

解説

ご両親の、GM君への関わりは、「貧相」の一言に尽きました。

ほめたことがない。
テストで良い点を取っても「そんなの当たり前」。
GM君への笑顔がない。スキンシップもない。いい言葉がけもない。
家庭の中での挨拶もない。
ねぎらいも感謝もない。

特にお父さんは子育てへの関わり方を知らない人。
いじめの件でお母さんが孤軍奮闘していても、ワレ関せず。
GM君が学校へ行こうが行くまいが、ワレ関せず。

もう一つ困ったのがお兄ちゃんの存在。
お兄ちゃんには発達障害があり、その養育には大変な苦労があったようです。

そしてその分GM君はほったらかされ、
お兄ちゃんの成績のことで親は気を揉み、
その分、何を言わなくても勉強をし優秀だったGM君はますますほったらかされ、

お兄ちゃんは大学へ行かなかったので、
その分優秀だったGM君には有名大学進学への期待がかけられ、声優学校へ難色を示され、

お兄ちゃんはGM君にたびたび攻撃を仕掛け、
その分GM君は我慢を強いられ、兄弟の仲は断絶状態。

これを愛着不足といいます。
愛着不足から、ある心理学的経路をたどって社交不安障害に至ります。

従来の臨床例から、私は「父親の愛着不足は、社交不安障害の最も危険な因子である」と考えていたので、まずお父さんから変わってもらうことにしました。

そして愛着関係を再び作り上げるための指示を、矢継ぎ早にお母さんに与えました。
幸いご両親ともに私の指示をすぐに取り入れて実行して下さいました。

ちなみに私はなぜ「大学進学をあきらめろ」とご両親に指示したのか?
それは、社交不安障害を起こすと、「当人の本意に沿ったこと」しかできなくなるからです。

だからお父さんからGM君にある宣言をしてもらいました。

「学校へは無理して行かなくていい。
大学へも行かなくていい。
声優学校進学を応援する。
オマエは大事な息子だから。」

これを聞いた途端、GM君の顔色がぱっと明るく変わり、
「声優学校進学のために登校したい」。

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